再生周波数帯域の最下限を受け持つ超低音は数数Hz~30Hzの周波数帯域といわれ、スピーカーとしての実用的な帯域としては数数Hz~60Hz程度を目安とした3オクターブの再生を担っています。
スピーカーにおける超低音再生の難しさは、超低音再生での高調波歪みの発生を防ぐことにあります。周波数の2乗に反比例して振れ幅が増加し、ボイスコイルと磁極の磁束分布に関連した駆動力の直線性と支持系の機械的直線性確保が、通常の条件よりも非常に困難になるためです。例えば、160cm口径、80cm、40cmの3種類のスピーカーで基準軸上1mの点での出力音圧レベル120dBを得るには、それぞれの5mm、21mm、91mmの振れ幅が必要であり、口径が小さいほど著しく難しくなります。
また、聴取距離に関係するのですが、平面波的な空気の振動波面を作るには口径の大きい振動版が必要で、大きい振動板であれば当然振れ幅も小さくてすみ、超低音再生を高品位再生するとなれば、大口径のスピーカーが必要条件となります。
大口径スピーカーの振動板は、大きい空気付加質量を伴ってピストン振動を大きい振れ幅で歪みが少なく再生するために剛性の高い材料が求められます。このため、振動板は厚みのある密度の小さい軽い基材が望ましく、ハニカムのサンドイッチコーンや発泡系樹脂をサンドイッチした複合化振動板が紙のコーンに代わって使用されています。
次に、超低音再生では低域共振周波数を低くする必要があり、このとき振動系の質量を増やすと共に支持系のコンプライアンスを大きくしなければなりません。しかし、支持系をハイコンプライアンスにするには、振動系の大振幅に対応して支持をすることと、長期的に安定した位置関係を保つ必要があります。人の低音に対する聴覚特性は鈍感で、最小可聴レベルも低音では高くなっています。このため、再生音圧レベルは高い値まで歪みの少ない再生が求められ、JBLではエンクロージャーを含む周波数特性はできるだけ均一な特性を目指しています。
パイプオルガンの最低周波数の再生にとどまらず、ヴァイヴラートの基音のゆらぎやドアなどによる衝撃的な空気感、暗騒音による空気感などいろいろなところに超低音はあります。