複合系スピーカーシステムを駆動するには、ネットワーク回路方式とマルチチャンネルアンプ方式があります。
マルチチャンネルアンプ方式は、駆動用パワーアンプとプリアンプの間にチャンネルデバイダーというフィルターを挿入します。フィルターで各受け持ち帯域を分割し、出力レベルを調整して各帯域専用の駆動用パワーアンプに接続し、スピーカーを駆動します。3ウェイの代表例では、
- 各帯域のスピーカーの電気インピーダンス曲線の違いなどに関わらず、直接駆動アンプにつながっているため入力側のフィルター特性に対応した伝送特性となり、-18dB/oct.以上の急峻な特性も可能でクロスオーバー周波数付近の特性もスムーズになる。
- 各帯域共にスピーカーと駆動アンプの間にネットワークやアッテネーターが介在しないために定電圧駆動ができ、ダンピングファクターが変わらず過渡特性の優れた特性が得られる。
- 各帯域のアンプの入力レベルを調整して全帯域のレベルあわせが容易である。
- 各駆動アンプの再生帯域が限定されるため、ピークファクターが軽減され、それだけ余裕度が小さくでき、出力の小さいアンプが使用できる。変調歪みも軽減できる。
一方で欠点もあります
- 分割チャンネル数だけ駆動アンプが必要となり、オーディオシステムとして規模が大型化し、費用も高価になる。
- 駆動アンプの振度の微小変動でも、各帯域のレベルが変化して再生特性が変わり、音質に大きい影響を与えやすい。
- チャンネルデバイダーによって広範囲に特性を調整できる便利さがある反面、確定的な値に設定することが難しく、不安を伴う。
- デバイディングネットワーク方式でも、マルチチャンネルアンプ方式でも帯域分割は、スピーカーの入力側の電気信号の制限であって、音響出力側には制限が加わっていない。このため、スピーカー自身が入力で歪みを発生した場合、低音専用スピーカーであっても裸特性が高音域まで延びていれば高調波が音放射され、中音、高音のスピーカー再生と干渉して音質を劣化させる。
JBLでもスピーカーシステムに駆動アンプを内蔵したシステム化の方向があるため、その場合、専用のマルチチャンネルアンプ方式を採用する方向性は強くなってくるものと思われます。