1980年以前の高性能スピーカーにはアルニコ磁石が使われていました。高価なアルニコ磁石を使った大口径ウーハーやドライバーはJBLのシンボル的な存在でした。しかし1970年台の末からアルニコ磁石はフェライト磁石に代わっていきました。

 

アルニコ磁石はアルミニューム、ニッケル、コバルト、3種の金属を主な材料にした合金の磁石です。70年代末からコバルトの調達が不可能になり、代わりにフェライト磁石が使われるようになりました。フェライト磁石は鉄系の磁石で、身近にある磁石と基本的には同じものです。

 

オーディオファンの中にはアルニコ磁石の方が音がよい、という主張があります。JBLなら1980年以前の製品の方が、現在のものよりも音がよかった、という主張です。実際、中古市場でもアルニコ磁石を使ったJBLは高値で取引されています。

 

アルニコとフェライト、ふたつの磁石の差は磁力です。アルニコ磁石の磁力はフェライト磁石の2倍です。スピーカーを駆動させるのは永久磁石とコイルの組合せです。フェライト磁石は磁力が弱く、そのためにコイルを含めた磁気回路が大型化します。磁気回路の構造にも違いが生じて、そのために音の歪みが発生することがあります。

 

アルニコ磁石のJBLの方が音のメリハリがよい、音の像がはっきりしている、力強い音が出る、というのがアルニコ派の主な主張です。すべてJBLのスピーカーの特徴とされているものです。JBLもフェライト磁石の弱点を克服する技術の研究に、かなりの力を入れたようです。そのひとつがフェライト磁石を導入する時に採用したSFGという磁気回路です。アルニコ磁石の音を復活させるというのがJBLの技術開発のテーマでもあり、現在の上級機の一部には新しい磁器回路を採り入れています。

 

ただし中古市場の価格差ほどの違いは無い、という意見もあります。逆にフェライト磁石は音楽のソースを選ばず、繊細な音が出るという声もあります。現実には難しいことですが、アルニコ磁石の方が音がよいかどうかは、聞き比べてみるしかありません。

 

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