多数の聴取者(大衆)を対象に電気拡声する場合、SR(Sound Reinforcement)とPA(Public Address)の2つの方法があります。

 従来の拡声はPAで、主としてスピーチの大衆への情報伝達を対象としてきました。聴衆とスピーカーの距離は離れ、広い空間に音を放射するため、聴取者に反射音を極力抑えて直接音を主体とした指向性のあるスピーカーシステムを使用し、明瞭度の高い再生音を狙っています。

 最近は、野外ステージなどでのクラシックコンサートにおいてJBLのスピーカーを見ることが多くあります。歌手の歌声を電気拡声することや、大型のホールにおいてPAの存在を意識させない再生がエンジニアやスピーカーに要求され、音源の位置や定位感、前方席と後方席の距離による時間差とレベル差に配慮した高品位再生が求められます。

このためPA用スピーカーシステムは点音源化を狙って、ステージや後部壁面の反射やバッフル効果を避けて宙づりのフライング形(設置条件は孤立系)とし、上からの高さにより前方席だけでなく後方席までをカバーした音圧差を抑える工夫が行われています。

 ポップス系の演奏会(ロックのライブステージ等)では観衆の声援の声が大きいことから、これを上回る再生音圧を出すために最大出力音圧レベルの大きいスピーカーが必要となります。そのためホール常設のプロセニアムスピーカーなどのシステムは使用せず、ステージ両サイドに積み上げたハウススピーカー形式が多く使用されました。フロントホーンの低音用を複数個置き、その上に中音用ホーンスピーカーを設置し、さらにその上に高音用スピーカーを設置する積み上げ方式のスピーカーシステム構成でした。

 しかし、スピーカー相互の位相干渉や音質バランスの難しさ等から最近では、バスレフ方式の低音部とホーンを組み合わせた複合系のワンボックス形スピーカーシステムを複数個スタックし、アレイ形式に重ねて平面配置や曲面配置にして、指向性特性を活かした使用方法がなされています。