JBLのスピーカー・システムには基本的な構成があります。低音のウーハー、中高音域のホーンという構成です。それはJBLがはじめて発表したスピーカー・システムの「D1001」から続いています。「D1001」に搭載されたスピーカー・ユニットは、D130を低音用に改良したウーハー130Aと、中高音用のホーン型スピーカー175DLHでした。
雑誌『Newsweek』から「夢のスピーカー」讃えられた「ハーツフィールド」もウーハーと中高音用のホーン・スピーカーのセットです。ホーン・スピーカーはコンプレッション・ドライバーと音響レンズの組合せという形になっています。ドライバーはコイルと磁石、振動板がセットされたスピーカーの駆動部で、ホーンと接合しなければなりません。振動板よりも空気の出口が狭いものをコンプレッション・ドライバーと呼びますが、小さな振幅で音を出すことができます。JBLが多用する技術のひとつです。
1957年に発売された「D4400パラゴン」は3wayとなりますが、1960年の「オリンパス」は2wayで、ウーハーはLE15と、ドライバーがLE75の組合せになります。LE15は口径38センチの大口径ウーハーです。以後、大口径ウーハーはJBLのシンボルともなります。38センチは、人間の可聴音域の下限を再生できるスピーカーのサイズとされています。
他社は合成樹脂、金属など新素材を採用しますが、JBLのウーハーのコーン紙は創業からパルプ紙で通しています。コーンの響きは素材に準じていて、紙製のコーンがもっともクセがないとされます。コーン紙は英語では「radio cone paper」、ラジオ用の円錐形の紙、という意味です。JBLのウーハーは浅めのコーン紙が特徴で、D130から続く伝統です。ライバルのALTECのコーン紙は深めです。浅めのコーン紙の方が理論的には効率はよくなりますが、強度は落ちます。
JBLのスピーカーユニットには4wayも5wayもありますが、基本は低音のウーハーと高音のホーンの組合せではないかと言われています。またD130以来、LE8Tなどフルレンジのスピーカーユニットを開発していますが、JBLはそれを使ったシングル・コーン、スピーカー1個だけのシステムは発売していません。